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映画が終わり、エンドロールが流れ始めても、彼女はまだ画面に釘付けになっている。
彼は、彼女の横顔を見ながら、映画が終わった時、彼女が彼の方を向いたらそれを合図にある事を実行しようと考えていた事があった。 いつもより少し早く音を立てる胸の音が、否が応にも彼を煽り立てている。 緊張が最高潮にまで登りつめた時、画面が真っ暗になった事でエンドロールの終りを告げられ、そして、とうとうその時はやって来た。 大画面で見る映画の迫力にいつしか飲み込まれ、‘彼’が横に居る事も、‘彼’の部屋に居る事も忘れ、映画の世界に入り込んでしまっていた。 エンドロールが終わってその事に気付くと、映画の余韻に浸ったまま、隣に座る彼に目を向ける。 「・・・?」 彼女の目の高さまで上げられた彼の両手は、何かを掬うような形を作って手のひらを上に向けている。 キョトンとしている彼女を見て、なんだか嬉しそうな表情の彼は、広げた手の平をもう一方の手でくるりと覆う。再度両方の手の平を上に向けるようにして見せると、彼のその大きな手の中に、金色のリボンがかかった黒い小さな箱が突如現れた。 「・・・わあ!凄い!」 みるみる明るくなる彼女の表情を見ると、彼はとても満足している様子である。 「どうやったの?ねぇ?」 突然見せられた手品に興奮したのか、いつもは敬語で話している彼女が、思わずタメ口になっているのにも気付かず、彼の手を上から見たり下を覗き込んだりして、どうやってやったのか必死で暴こうとしている。すると、頭上からはぁーっと大きな溜息と共に、なんだか切なそうな声が聞こえてきた。SPANISCHE FLIEGE PR |
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