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 亜梨沙のリムジンが高等部の正門の前に停まると、たちまち黒山の人だかりができました。

 構成比は圧倒的に女子が多いです。

 その中には坂野上さかのうえ麻莉乃まりの先生もいました。

 大きめのファーがついた毛皮のコートを着て、膝丈のスノーブーツを履いています。

(何だか久しぶりだわ、バトラーさん)

 女子生徒に混ざってウキウキしている麻莉乃先生です。

(やっぱり、里見先生の事は気の迷いよ)

 麻莉乃先生は苦笑いしました。

 運転席からトーマスが現れるとどよめきと溜息が起こります。

 トーマスはそれには全く反応する事なく、後部座席のドアを開き、亜梨沙の右手を取って誘導しました。

 それを見て絶叫する女子生徒も数名いましたが、それでもトーマスは無反応です。

「あ」

 麻莉乃先生は蘭が自分を見ているのに気づきます。

(貴女より私の方がトムの事を好きなんだから!)

 蘭は心の中でそう叫んで麻莉乃先生を威嚇しました。

 彼女はシルバーのダウンジャケットを着て、黒の革の手袋、黒のスノーブーツです。

(貴女にだけは負けないわ、桜小路さん)

 麻莉乃先生も蘭を威嚇します。

「ああ!」

 女子生徒の叫びも虚しく、トーマスはリムジンで走り去ってしまいました。

 亜梨沙はトーマスに握られた右手をボンヤリ眺めながら、校庭を歩き出します。

「おはよう、亜梨沙ちゃん」

 トーマスの「魔力」に比較的かかっていない天然娘の桃之木もものき彩乃あやのが声をかけました。




この文章はSPANISCHE FLIEGEで提供します。
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